ラバーズ研究所コラム

感染者数は過去10年で最多に!急増中の感染症「梅毒」について知ろう

昔は「死の危険がある病気」と認識され、日本を含む世界中で流行していた性感染症・梅毒。「早期に発見できれば治療が可能になったこと」「日本でも1967年以降は報告数が減少を続けていたこと」などもあり、「梅毒=昔の病気」というイメージを持っている人が多いだろう。

だが近年、その梅毒が再流行を見せている。2015年には2698人が罹患し、過去10年間の最多記録を更新。特に女性の感染者届出数は過去5年で5倍に増えたことから、厚生労働省では『女子の梅毒 増加中!』というリーフレットを2015年に作成している。

(厚生労働省ホームページより)

この梅毒の流行について、医師の岩室紳也先生に話を伺った。岩室先生は90年代からHIV/エイズの診療を続けているが、先生が診断する患者の中でも梅毒は増えているとのこと。

「問題なのは、梅毒という言葉自体がもはや死語になっていること。高校の保健の教科書の9割5分以上を占めている大修館書店の教科書にも、梅毒という言葉は出てきません。若い世代については、梅毒という言葉を聞いたことがない人も多いのではないでしょうか」

また医師の中でも「梅毒患者を診たことがない」という人が実は多いのだそうだ。

「私は1955年生まれですが、梅毒が最も流行していたのは私が医師になる前のことです。近年の梅毒はHIV患者のあいだでも広がっている病気のため、HIV/エイズの診療に関わっている私はその症状を実際に見る機会が増えきました。ただ、HIV/エイズに関わっていない医師の中では、梅毒の症状を見たことがない人も多い。そのため、早期発見・早期診断ができず、さらに感染が拡大しているんです。」

コンドームだけでは梅毒の感染は防げない

なお梅毒の具体的な初期症状としては、感染から3週間ほどのあいだに

・感染がおきた部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門等)にしこりや潰瘍ができることがある
・股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることがある

などの異常が身体に出てくるとされている。ただし、痛みがないことも多いため、梅毒という病名を聞いたことがない人はまさか性感染症とは気づかないだろう。そして、厚生労働省は先述のリーフレットで、「コンドームの適切な使用によりリスクを減らすことができます」と呼びかけているが、岩室先生は「コンドームだけでは梅毒の予防はできない。」と話す。

「淋病やクラミジアなどの性感染症の場合は、精液の中に病原体が含まれるため、コンドームが大きな予防効果を発揮します。一方で梅毒については、病原体が潜む潰瘍が性器以外の皮膚上にできることがある。つまり、コンドームを使用して性器を覆っても、ほかの部位の接触で感染してしまうことがあるんです。私が診療した患者でも、コンドームを使用していても梅毒に感染した……という人が実際にいました。」

昔の梅毒は、感染後数年で心臓や血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死に至ることもあった。ただ治療法が見つかった現在は、そこまで進行するのは稀とのことだ。

「ただ、痛みや病気の自覚もない感染から1カ月程度の時期でも、梅毒には相当な感染力があります。また、梅毒は一度治っても、体の中に残った菌によって再発することもある厄介な性質もある。『体に発疹みたいなものができた』『痛くない潰瘍ができている』といった症状が出てきたときは梅毒の可能性を疑って病院に行ってほしいですし、梅毒を診た医者はHIVの検査もぜひしてほしいですね」

妊娠中の女性が感染すると胎児に悪影響が出るリスクも

ちなみに梅毒を診た経験があるベテランの医師は、泌尿器科医より皮膚科医の方が多いそう。性病を診てもらう=泌尿器科というイメージの人も多いだろうが、梅毒の場合は皮膚科に行けばOKとのこと。

「ただ、若い医師の場合は梅毒を診た経験がない場合もあるので、症状の自覚がある場合は『梅毒かもしれません』と自分から伝えたほうがいいでしょう。また、女性の場合は産婦人科でも診断をしてもらえます」

なお妊娠している女性が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産・早産・新生児死亡・多臓器の異常が起こることがあるという。

「もちろん産婦人科では、妊娠時に梅毒の検査を行ってくれます。ただ、妊娠中にセックスをして、その相手から梅毒を移される可能性もゼロではない。ですので、妊娠後のセックスでも梅毒の感染予防には気をつけてほしいですね。コンドームだけでは梅毒は防げませんが、妊婦さんはコンドームを使わないことが多いので、危険性はさらに高まります。」

梅毒の感染報告数は、2010~2013年には特に「男性同性間の性的接触」において増加傾向にあった(『感染症発生動向調査 週報』2015年 第44週より)。そして、その後は女性の異性間性的接触や男性の異性間性的接触による感染報告も増加している。つまり、MSM(男性間性交渉者)の間で広まっていたものが、そのほかの人達にまで拡大しているというわけだ。

「梅毒はセックスのアクティビティに積極的で、なおかつコンドームを使わない人の間で感染しやすい病気。その点はHIVと同じで、実際にその両方に感染している人も多いんです。梅毒に感染している人は、HIVの検査も念のためしたほうがいいでしょう」

梅毒についての知識を持つこと、疑わしい症状が出たら検査に行くことは当然大事だが、何より普段から安全なセックスを心がけてほしい。

岩室紳也先生

1955年、京都府生まれ。ヘルスプロモーション推進センター代表。HIV/エイズの診療を90年代から続けており、現在も厚木市立病院泌尿器科で診療を行っている。一方で自らを「コンドームの達人」と称し、中学校や高校などでエイズ予防と性教育の学校講演を年間100回ほど行っている。

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