(Gunosyからの転載記事)
正しい情報をキャッチすることが大事
――感染症に対して不安を抱えているのですが、予防するには何から始めればいいですか?
岩室先生:まずは、感染経路を正しく知ることです。これはとても簡単なことで、病原体とヒトの間に接点がなければ感染はありません。もし接点があるならば、それに対して何らかの防御策を入れればいいのです。
岩室先生:例えば、HIVなら性的接触による感染なので、コンドームの装着や性行為そのものの回避などが考えられます。私の話ですが、かつて初めてエイズウイルスに感染している人と握手をした時、思わずパニックになりました。どうしてかというと、ウイルスが体液(精液、血液、汗)の中に存在するという知識しかなく、肝心の感染経路を正確に理解していなかったからです。「誰かが言っていたから」などの情報に惑わされず、そのウイルスがどういう感染経路をたどって身体に入るのか、そしてどういう防御が適切なのかを正確に考えましょう。
――なるほど。確かに感染症は情報が錯綜する面もありますし、落ち着いて正しい情報をキャッチする必要があるんですね。
岩室先生:私はよく、「防災から減災へ。予防ではなくリスク軽減を」と話しています。例えば手洗いをしても、ウイルスがゼロになるとは限りません。ですが、付着している可能性が高いなら洗うに越したことはないですよね。100を身体に入れるか、1を身体に入れるかでは全く違いますから。
性感染症をサポートする社会
――先生は、コンドームの達人として活動されていますよね。先ほど話にあったHIVをはじめ、性感染症についてはどうお考えですか。
岩室先生:性感染症に関してはまず、「性感染症になって何が悪いの」とみんなが思う社会を作ることが大事だと思います。もちろん、ならない方が良いに決まっています。だけどその状態になってしまった人たちが孤独にならないように社会全体で受け入れ、サポートしてあげる体制を作る、これも非常に大切なことです。
岩室先生:「性感染症になるな」と言うことは簡単ですけど、そんなことを言うお医者さんのところに患者は行きたくないですよね。私が、予防じゃなくてリスク軽減を訴えているのはそこなんです。なってしまったものは仕方がない、じゃあ次は、自分から次の人にうつさないようにするにはどうすればいいか、ということを考えるきっかけを作りたいのです。
――パートナーや周囲の人を思う意味でも、リスク軽減についてもっとしっかり学ばなければいけないと感じました。性感染症の場合は、コンドーム装着の意識づけが重要なのかなと。
岩室先生:とはいえ、コンドームも完全ではありません。ちゃんと装着しているつもりでも破れることだってありますから、自分に合ったサイズを選ぶことも重要です。また、時には勢いで使用しない日もあるでしょう。ただ、それを責めてはいけないと私は思っています。
人は経験に学び、経験していないことに関しては他人事です。例えば、今までにまだ妊娠したことがない、させたことがないと話す人がいたとしたら、それもある意味で経験に学んでいるわけです。理想は装着することですが、失敗をすることは誰にでもあり得る。そんな時は私をはじめ、近くの医師に相談して欲しいですね。
コンドームで性感染症を考える
インタビューを終え、「さすがはコンドームの達人」どれも納得させられるお話ばかりでした。今後は感染症のことはもちろん、コンドームに対する意識もガラリと変わりそうです。
そんな取材からの帰り道、マスクなどを買いにドラッグストアに立ち寄ったところ、こんな商品を見つけました。
オカモトが販売している、『プレミアム ゼロゼロスリー+ビバジェル』という商品です。このコンドームの特長は、潤滑剤に「SPL7013」という薬剤が0.5%配合されており、その薬剤は、ASTM E1052準拠試験においてHIV及びHSVに対し抗ウイルス作用が確認されているようです(ただし、臨床での抗ウイルス作用は未確認とのことですが)。
ただでさえ、リスク軽減のことは他人事で片付けてしまいがちです。だからこそ、性感染症についても真剣に考える良いきっかけになればいいなと、心に強く思った筆者なのでした。
“ビバジェル”については、下記のページでも解説されていました!
( Gunosy 2020年3月25日記事 )