(『ねとらぼ』からの転載PR記事)
「正しいコンドームの使い方」を伝えるためにはゴローが伝説のコンドームを見つけてコンドームバトラーになるアニメを作らないといけなかったそうです。
皆さんは「コンドームバトラー ゴロー」をご存知でしょうか。「コンドームバトラー ゴロー」とは一昔前に放送されていたバトルもののアニメーション……の体をなしたオカモトによるコンドームのWeb広告動画です。ある日、何もすることがないので家でインターネットをし続けていた筆者は、偶然この動画に行き当たり大変な衝撃を受けました。と、いうのもこの「コンドームバトラー ゴロー」、かなりどうかしている内容なのです。
「これは一体何なんだ、いったいどうしてこんなものが出来上がってしまったんだ!?」という疑問が頭の中を占拠し、何をしていても手に付かなくなってしまった筆者。これでは仕事になりません。実際に関係者の方に話を聞いて、疑問を解決しないことには人生が暗くなるばかりです! と、いうことで、今回は「コンドームバトラー ゴロー」についてオカモトの方にいろいろと聞いてきました!
オカモトの攻めすぎている動画企画「オカモトラバーズ研究所」
――「コンドームバトラー ゴロー」見させていただきました。いろいろ言いたいことはあるんですが……。まず自己紹介からお願いいたします。
和田さん:オカモト株式会社の和田と申します。元々はコンドームの営業をしていて、現在は主にコンドームをはじめとした商品のプロモーションを担当しています。
――この「コンドームバトラー ゴロー」に関しても担当者みたいな感じですか?
和田さん:そうですね。「コンドームバトラー ゴロー」はオカモトラバーズ研究所というサイトの1コンテンツなんですけど、その立ち上げ時点から関わっています。
――オカモトラバーズ研究所というのはアレですよね、結構攻めたコンテンツが多くて度々話題になっている。
和田さん:第1弾は2016年の1月に始めました。「世界初の恐竜の交尾映像」というCGで作ったCMなんですが、いきなり初動で200万回再生されて……。
和田さん:オチとして「恐竜にはコンドームがなかったけど、人類にはコンドームがあるので避妊や性感染症の予防ができるよね」というメッセージを伝える内容になっています。
――これが一発目なのはすごいですね。
和田さん:作ってくれた方もCG業界で有名なクリエイターさん(森江康太氏)で、完成度が高かったです。一番予想外だったのが「海外の方にも結構見ていただいた」ということです。この動画の最後に「オカモトゼロワン」という商品が出てくるんですけど、海外の拠点にも「オカモトゼロワンをうちの国では売らないのか」という問い合わせが現地から出てきたりもして。それぐらい反響としては大きかったです。
和田さん:その次が「ゼロワンベルト」というコンドーム専用ウェアラブルデバイスを開発するプロジェクトです。音声認識で「ゼロワン」というとコンドームが飛び出るというすごいしょうもないものですね。
――技術の無駄遣いの極みみたいな話ですね。
和田さん:「コンドームをつけない理由」を考えて、つけてもらえる策を検証するっていう動画になってます。その後もコンドームの着け方をエクササイズ風に教える「オカモトコンドームトレーニングキャンプ」っていう動画を作ったりしています。
――なんかどっかで見たことがあるような感じですね……?
和田さん:そうですかね? このトレーニングキャンプは今までで一番反響があって800万回ぐらい再生されました。日本の性教育でなかなかこの(コンドーム装着の)内容に突っ込めないところがあるので、「ふざけてるように見えるけど、中身はしっかりしてるよね」ということを評価していただいてます。
――サンプラザ中野くんが楽曲を制作している動画も気になったんですが、なぜサンプラザ中野くんなんですか?
和田さん:サンプラザ中野くんはHIV/エイズの啓発活動へ協力しているアーティストなんですよね。“コンドームを着けてほしいけど言い出しにくい”“コンドームを買いたいけど、お店で買うのが恥ずかしい”そんなあと一歩勇気を出したい方に向けた「勇気を身に着ける」楽曲を制作してもらいました。
――そして昨年公開されたのがこの「コンドームバトラー ゴロー」。これはなんでこういう絵柄のバトルアニメなんですか?
和田さん:次はアニメーションでいこう、ってことになったときに「バトルアニメならとっつきやすいかな」というのがありました。
――なるほど。
和田さん:最初は「コンドームソードで戦う」というアイデアが出たんですけど、「コンドームは攻撃するものじゃなくて守るものだから」という社内関係者からのアドバイスもあって今の作風になっています。
――めちゃくちゃ正論だ。
和田さん:なので剣ではなくてアーマーで体を守るということになりました。あくまで「コンドームの正しい使い方」を伝えるのが目的なので。
――「ゴロー」は全56話となってますけど映像化されているのは飛び飛びで4話分しかないんですね。
和田さん:ゴローだから、56話まで作るというのは決まっていたんですが、諸々の事情で飛び飛びになりました。一応1話から56話まで何が起こっていたのかっていう設定は決まってるんですよね。だから、本気をだせばその間も作れます。諸事情により本気は出していませんが……。
――なるほど、では実際に1話ずつ見ていきましょう。
第1話「コンドームバトラー ゴロー誕生」
――伝説のコンドームを開けてコンドームバトラーになったゴローが「コンドーム狩り」と戦うのが第1話ですね。冷静にあらすじを振り返ると「何言ってるんだ」って感じですが……。
和田さん:コンドーム狩りはコンドームを2枚重ねにすることで「強力な持続力」を得たと言っているんですが、2枚重ねはコンドームの正しい使い方ではないので結果的に負けてしまいます。
――実際に重ねる人がいるんですか?
和田さん:そうですね。1枚より2枚のほうが安全、という印象があるかもしれませんが、むしろコンドーム同士の摩擦で破れやすくなるので間違った使い方なんです。
――「重ねると安全な感じがする」っていうのは誤った認識なわけですね。
和田さん:根本的に1枚で装着するように作られている、ということです。コンドームを膨らませたことってあります?
――いや……僕はないですけど。
和田さん:コンドームって結構膨らむんですよ。水とか入れても全然大丈夫で。それだけ強度があるんです。検査に合格したものを商品として出しています。コンドームって結構都市伝説が多いんですよね。「コンドームを財布に入れたらお金が貯まる」とか。
――見たことある気がしますね、財布に入れている人。
和田さん:僕らとしてはコンドームを財布に入れるのは「ダメ」なんですよね。メーカー的には、持ち歩く際は専用のケースに入れて保管してほしいところです。
――ケースを持ってない場合はどうするのがいいですか?
和田さん:そうですね、基本的には箱で持ち運んで頂けると。こういうのはすべて「取扱説明書」に書いてあるんですけど……。
――取扱説明書、初めてちゃんと見ました。
和田さん:取扱説明書も読んでいただきたいのですが、こういうアニメでも理解してもらえればと。一見おかしな動画だけどちゃんと見ると重要なことを言っているという風に作ってます。
――たしかにただ真面目なだけの動画だと誰も見てくれないですもんね。オカモトさんの動画は伝えたい内容は入れつつもコンテンツとして振り切っているからどれもバズっていてすごいと思います。
和田さん:まだまだコンドームに対して世の中の多くの人に正しく理解されていないことって多いんですよね。我々のアピール不足でもあるわけですが……。
――そういえばコンドームにこんなに種類があることも今日初めて知りました。
和田さん:種類が「こんなにあるんだ」ということもそうですけど、「実はこういう機能があって」とか「こういう目的だからこういう風に作ってるんだよ」とか、なかなか伝えきれてないので、その伝え方をいろいろ考えてこういうアニメになってます。コンドームの情報をTwitterでシェアとかしにくいじゃないですか。でも面白い動画だったら、シェアのハードルも下がるっていう。なので、コンドームを2枚重ねるのが間違った使い方なんだ、ということを広くちゃんと伝えるためにはゴローが伝説のコンドームを見つけ、コンドーム狩りと戦わねばならないということですね。
――なんかうまく言いくるめられているような……そういえばコンドーム狩りって結局なんなんですか……? つけてる人間を見つけてとっていくんですか?
和田さん:……悲しい運命があるんです。彼には昔彼女がいたんですが、コンドームをつけようとしてうまくいかなくて別れてしまったんです。それで彼は「コンドームがなければあんな思いをしなくて済んだんだ」という間違ったほうに解釈してしまって、この世からコンドームを無くそうとしてるんです。だから善意でコンドーム狩りをやってるんですね。善意の悪というか……。
――なんかアメコミのヴィラン(敵役)みたいですね。あと、ミクとハヤトという2人の仲間がいますよね。全員数字が服に入ってるのは、ゴローが56、つまりゴムの語呂合わせだからですか?
和田さん:まあ、基本的にはそうですね。ちなみにミク(39)には名前の由来があって、コンドームの別名に「サック」というのがあるんですよ、それとも語呂合わせになっています。ハヤトにはそういう語呂合わせの設定はないんですが、「何かが早い」ということになってます。
――何が早いんでしょうね……。全く見当が付きません。
和田さん:実は名前が数字の人には特別な意味があるんですよ。後ほど「この人も数字なんだ」というのが出てくるので覚えておいてください。
――伏線だ!
和田さん:あと、冒頭のコンドームが刺さってるシーンの説明だけしていいですか? 「伝説の○○」ってよくあるじゃないですか。それをイメージしてもらうといいと思うんですけど普通の人たちは今まで伝説のコンドームをうまく開けられなかったんですね。だからずっと残ってるんですけど、ゴローは触るのが初めてなのに開けられるんです。というのも彼はちゃんと指の爪を切っているし、コンドームを横に寄せる動きもしてるんです。正しい開け方と正しいエチケットを守っているから、彼は伝説のコンドームを開けられたんです。
――な、なるほど。「なんか変な動きしてるな」とは思ってましたが、まさかそんな深いものだったとは……。
和田さん:彼は特別な血を引いているから、本能的にそういうことができたんだと思います。コンドームを端に寄せて、その逆を上から下まで切りきらないといけないんです。じゃないと傷つく原因になるので、ここはこだわって描写してますし、何回も修正してもらいました。
――アニメの考察とかするディープなファンにしか気付かれない部分ですね。
和田さん:コメント欄には「ちゃんと横に寄せているんだ」みたいに、気付いている人もいましたね。横に寄せてる絵も取扱説明書には書いてあります。
――ちょっとした小ネタにも参考になる要素があるわけですね! では次は19話を見ていきましょうか。
コンドームバトラー ゴロー第19話「サバイバル試験開始」
――これ、19という数字に意味は……?
和田さん:特に意味はないです。
――本当ですか? なにか語呂合わせになってるとかは……?
和田さん:ちょうどこのシーンを映像化しようとしたら19話だったんです。
――わ、わかりました……。19話はゴローたちがコンドームプロライセンス試験に挑戦するという内容ですけど、受かるとどうなるんですか?
和田さん:プロコンドームバトラーになります。
――やっぱりアマだとだめなんですか? コンドームバトラーは。
和田さん:アマチュアだから悪いってわけじゃないですけど、まあ……プロはそれなりに認められてるんじゃないですかね……。
――なんか歯切れが悪い! 今回はノーコンドームのレオというキャラクターが出てくるんですが、これはどういう人ですか?
和田さん:ベタなライバルキャラを作りたい、ということになったんですね。漫画とかでも、こういう試験みたいなのがあるとライバルキャラが増えるじゃないですか。
――あるあるですね。
和田さん:ちなみにレオは「00」の語呂合わせです。オカモトのコンドームは0.01とか0.02ですが、レオはノーコンドームなので「00=レオ」という。レオなのでコスチュームはレオタードにしました。
――レオは「プロはギリギリになってからセッツする」というこだわりのせいで、性感染症の森で負けてしまいますね。「性感染症の森ってなんだよ」と思いましたが。
和田さん:突然性感染症の森が出てくるんですけど、そもそもサバイバル試験っていうのは「どんなことが起こるかわからない」ってことなんですよね。それは性交渉にも同じことが言えて、性感染症のリスクがあるかもしれない。
――なるほど、物語が性交渉の比喩になっている……?
和田さん:コンドームが用いられる部分についてはそうですね。コンドームは避妊だけでなく性感染症予防のためのものでもあるので、接触感染を予防するためにも最初から着用するべきだということを伝えています。ゴローたちは最初からセッツしていたので無事だったと。
――あと「コンドーム師匠」が出てきますが、独特の顔つきの。
和田さん:はい……独特な顔つきの……。
――……この人に2話から18話のどこかでコンドームのことを教わったっていうことですか?
和田さん:師匠の教えを受けていよいよ試験に臨むというのがこの19話です。ちなみにラストカットに出てくるケツアゴのキャラも試験中に出会った仲間で事あるごとにゴローを助けてくれるという設定ですね。
――結構深くまで設定が作りこまれている……。じゃあ、次の話を見ていきましょう。
コンドームバトラー ゴロー第45話「魂道武選手権大会トーナメント開幕!」
――45という数字なんですけど、これは?
和田さん:何の意味もないですね。
――(深く追求するのはやめておこう)……45話は世界一のコンドームバトラーを決める「魂道武選手権大会」にゴローたちが挑むという話です。こういうトーナメント編というのは、漫画ではよくありますよね。
和田さん:このぐらいの話数でトーナメントになっていきますね。どうしてもそこまでの力を試したくなっちゃうんじゃないですか?
――ゴローの相手は「保湿魔のシットリ服部」ですが、これは決勝とかではない?
和田さん:めちゃくちゃ序盤です。確か1回戦ですね。
――ちなみにこの試合の結末は「敵がハンドクリームの油分でコンドームが劣化して自滅」というものですが、「コンドームが油分に弱い」というのはほんとに知らなかったので勉強になりました。
和田さん:油分でコンドームが劣化し、破れる危険があるんです。ハンドクリームとかって季節によってはつけがちじゃないですか。今なんか特にアルコールで除菌したりすると手が荒れて使う機会も多いですし。それだとダメなんですよね。
コンドームバトラー ゴロー第56話「さらば愛しのゴロー」
――では最終話56話。これがゴムの語呂合わせだということは言っていいんですね?
和田さん:「この物語を当時作った人たちがゴムにちなんで56話で終わらせようとした」ということですから。必然的に語呂合わせです。
――他の話も語呂合わせな気がしてならないんですが……。
和田さん:それは気のせいだと思います。そういう意見もあるっていうことに僕らは今ちょっとびっくりしてますね。
――アニメを見てるといろいろ裏設定とかあるので……深読みしすぎだったかもしれません。
和田さん:「コンドームバトラー ゴロー」は深読みできるアニメですからね。
――56話はラスボスである「ゴムシナイ伯爵」との決着が描かれ、最後に彼がゴローの父だったということが判明しますね。
和田さん:ちなみに「ゴムシナイ」も56471で数字なんです。
――ほんとだ! で、父とはなんで戦ってたんですか?
和田さん:それは……行き違いですよね。
――行き違い!?
和田さん:ゴローはゴムシナイ伯爵が「コンドームをせずにコンドームバトルをした」ということで、めちゃめちゃ敵対視するわけです。なぜならコンドームを使わないでバトルするなんて邪道だから。でもゴローたちはまだまだコンドームバトラーになって日が浅いので「コンドームをしないとき」――つまり「親になるときがいつかやってくる」ということを知らないんです……。
――半分以上何言ってるのかわかりませんが、いい話的な雰囲気を出していることはわかりました。
和田さん:お父さんはゴローがそういう状態だということをわかってはいるんですが、その事実に自分でたどり着いてほしいから言わなかったんです。そのボタンの掛け違いが積み重なってここまでバトルすることになってしまったんですね。でも最終的にゴローも「コンドームをしないことがすなわち悪ではないんだ」ということに気づくわけです。あと小ネタなんですが、この柱と柱の間の空間、コンドームなんですよ。
――あ、ホントだ! コンドームがありますね。
和田さん:倒れた柱もちょっと先端の精液だまりとかがコンドームっぽくなってます。
――すべてが比喩になってるわけですね。フロイト的な世界観だ……。
和田さん:あと実は父の目の色がゴローの目の色と一緒なんですよ。
――おお、凝ってる。
――いやあ、こうしてすべての話を見てくると、意外とコンドームの真面目な知識が入っているということがわかりました。
和田さん:私達が作ってるコンドームというのはまだ日本でいうとアダルトなイメージなので、本来の目的である「避妊」と「性感染症の予防」という用途がなかなか伝わっていないので……。とはいっても「性感染症を予防しよう」とか「避妊は大切だよ!」とそのまま言われるのってちょっと受け取りづらい側面もあると思うんですよね。センシティブな内容ですし、ちょっと硬い感じもしますから。「面白い」内容にして、知るきっかけになればと思い作りました。アニメーションもその一環というわけです。
――結構シリアスな経緯があるということはわかりましたが、それを越えてネタに力を入れすぎているようにも感じられました。
和田さん:それは最近私達も感じていて。この2月にflumpoolさんにコンドームケースをデザインディレクションしていただいたんですが、それを見たお客様からのコメントで、「今まで散々ふざけてたのにさわやか路線に切り替えようとしたってダメだからな!(笑)」と、ツッコミをいただいたりもしました(笑)。お客様にもそんな風にいい感じにイジってもらえているので、しっかり認知してもらうという意味では成功しているのかなと思います。ちなみに、flumpoolさんにコンドームケースをデザインディレクションしていただいた際に、インタビューとメッセージ動画を収録し、公開しています。メッセージ動画では、山村さんが「マスクと同じように」というようなことをメッセージとして話されているんですが、お客様のコメントでも、「性感染症も感染症で、そういうのもちゃんと啓発しなきゃね」というようなコメントもあって我々のメッセージをご理解いただけていてよかったです。こういう企画をやるとTwitterをすごくエゴサするんですけど(笑)、好意的に受け止められているみたいでした。
――なるほど、確かにマスクとコンドームには共通点がありますね。ゴローをきっかけに、こんな考えさせられる真面目な話になるとは思いませんでした。……で、ゴロー、これは続編があるんですよね?
和田さん:一応そのつもりではあるんですが、まだ言えることがそう多くないんですよ。
――この記事で盛り上がれば第二弾が出る可能性もあるわけですね!
和田さん:……そういうこともあるかもしれませんね。
ということでコンドームについて真面目に勉強になり、続編の構想(!?)も飛び出すなど充実のインタビューになりました。「コンドームバトラー ゴロー」をはじめとしたコンテンツはオカモトラバーズ研究所で絶賛公開中ですので、皆さんもご覧になって、コンドームの正しい使用法について思いを馳せてみるのはいかがでしょうか?